コンサルティングの実例

 内発的な改革活動とマネジメント(経営)志向の徹底が行政経営改革の「成功の鍵」です。これは、①首長のリーダーシップ、②職員の参画、③十分に準備された改革計画があれば、実現することができます。ここでそれに取り組んだ実例(守秘義務が解除された)を県、市、町、村別に紹介します。

 後は「成功への扉」を開けるあなたの行動だけです。扉の向こうに、行政組織と地域の盛衰を左右する、これからの行政の実像があります。

 


◆県の改革実例:三重県の場合

【組織が蘇る】

 議会棟の講堂で開催された「行政経営に関する最初の説明会」は、職員の改革アレルギーが蔓延していました。行政経営導入当時の三重県は、記入作業だけが増えた事務事業評価制度の導入で、改革の動きが頓挫しかけていまた。

 

【二流県庁・職員からの再生】

 しかし、改革担当部署の粘り強い努力と行政経営の概念浸透、PDCAプロセス導入は、後年に行政評価を役立つものに変えることになります。行政経営改革は、「何事もほどほどです」と二流県庁・職員と自己評価していた職員を変革します。ここから三重県の再生と創生がスタートしました。

 

【地方から日本を変える】

 当時の北川知事は、コンサルティングを担当した淡路の「県行政への経営導入の狙いは」との質問に、「地方から日本を変える。その見本にしたい」とその決意を明らかにします。北川知事のこの「想い」は、知事を辞した現在でも変わることはありません。
 三重県の行政経営改革の成果は、よく準備して行政経営改革を実行した場合の成功実例です。行政経営改革の方法は既に準備されています。後は導入に向けて決定し行動するだけです。

     -『首長と職員で進める行政経営改革』より- 

-庁内の変革例-

県民との対話室

通路の壁をなくす

部内の壁をなくす


一新した座席配置

経営指針の明示

簡素な知事室受付



◆市の改革実例:三鷹市の場合

【自治体のトップランナー】

 関係者の多くが、三鷹市の政策とそれを支える自治体経営を高く評価します。 
 事実、三鷹市民の市政への信頼度は高く、市民と協働した三鷹市の先駆的な政策と本格的な行政経営改革は、全国の自治体に大きな影響を与えています。

【付け焼き刃ではない】
 清原市長は、淡路の「マスコミのランキングなどでの高い外部評価で油断が生まれるのでは」との質問に、三鷹の経営力は長き歴史があり、つけ焼き刃でないとした上で、「三鷹市の市民対応の基本は、職員が市民の立場に立って政策を創造し、それを幹部が支える」と語り、市民志向のマーケティングと、それを実現する行政経営(マネジメント)の仕組みの重要性を強調します。改革成功のエビデンスを明示します。

【市長と職員】

 さらに「市長と職員の関係」に関する質問には「法律と条例に基づいて、正義感を持って、誠心誠意やって欲しいと言っている。ただし、条例に問題があったり、法律が現実に即していない場合は遠慮なく問題提起して欲しいと。そういう場合には、どんな制度であれ、開発行為であれ、福祉であれ何であれ、市長の私が対処する」と答えます。市民と接する職員を支える三鷹リーダーシップの片鱗です。

-先駆的な政策、革新的な改革事業の事例-

 使命である市民への貢献を柱に、三鷹市の行政経営改革の成果は政策の随所にみられます。
①清原現市長も含めた鈴木、山本、安田の各歴代首長の果敢で周到なリーダーシップの継承
②経営概念の長年の積み重ね
③市民と膝詰めで行うコミュニティの形成
④戦略的な政策会議(写真参照:理事者と各部の政策検討)
⑤民学産公の総合的な協働体制:企業の設立
⑥大義と経済性の両立を当然とする組織風土:予算ゼロ事業
⑦公共福祉に誇りをもつ職員
 

企業への出資

予算0事業の実施

継続的改革・改善



 パフォーマンスを嫌い、市民にとっての実質的成果を求める、三鷹市とそこで働く首長と職員の改革への姿勢とその内容には、「地方消滅」と形容される、これからの地方の困難期を乗り越えられる、自治体の一つの姿を感じさせるものがあります。


◆町の改革実例:紫波町の場合

【最初は経営改革】

 地域の特性を生かしながら、共生、協働、地元学、交流を掲げて「循環型まちづくり」をめざす紫波町の行政経営導入の目的は、地域経営が担える行政経営の構築でした。

 3年間で行政経営の導入を行い、庁内に経営的な考え方とその実践を藤原町長とともに徹底しました。導入当初は「経営」の理解と戸惑いを感じていた職員も、自部署の経営の実態を見直すことで経営の重要性を理解し、組織も行政サービスの特性に合わせて課制から部制に再編しました。

 

【紫波オガールへ】

 こうして経営的な発想とそれを具体化する経営の仕組みを構築しながら、循環型地域社会の実現をめざす、協働の地域社会、循環型の地域経済の確立、そして公民連携の推進に取り組みました。その成果の1つが「紫波オガール」の誕生です。

-改革の成果-

 平成12年6月にオープンした「紫波オガール(岩手県)」は、「地方創生」向けの成功事例として紹介されます。内容は、民間人材・資金の活躍・活用が中心ですが、この成功の背景には、3年間にわたる紫波町役場の経営改革があります(下記参照)。

 コンサルティングを担当した淡路の「経営改革の目的はなににあるのか」の質問に藤原町長は「駅前開発による循環型地域社会の実現」と答えます。自立的な地方創生の成功は、行政経営改革が下地にあってこそ、可能になります。経営力なくして組織が成果を手にすることはありません。

 


全職員経営学習

階層別経営研修



紫波オガール

店内

併設図書館



◆村の改革実例:滝沢村の場合

【本気のリーダーシップ】

 柳村村長は、旧来の行政体質を打ち破るべく内発的改革に挑みました。「対話と権限委譲」を掲げて、庁内を歩き回り職員との対話を繰り返しました。
 「日本で住民に一番近い行政」を掲げ、職員の変化を期待して、行政経営改革への参画をしつこく迫ります。この「本気の姿勢」が、職員の内発的な意識変化と、それを具体化する仕組み構築に結びつきます。  

 

【30億円道路事業を350万円で】

 この役場の変化は村民を動かします。補助金仕様で30億円必要とされていた村道の拡幅事業が、村民との協働で350万円の税金で完成します。「補助金ゼロ事業」の先駆けです。地元自治会が中心となって用地交渉を行い、村民の重機の活用などがなされます。こうして最少の費用で「村民の長年の要望」が具現化されます。行政自己改革の大きな成果です。

【成功の3要因】

 柳村村長は,淡路の「改革が一定の成果をあげた要因は何か」の質問に「思考回路の改革と同時に経営の仕組みを構築したことである」「それは住民を一番大事にした仕組みで、それが住民志向の経営モデルの構築である」と返答します。
  改革当時は経営に無関心であった滝沢村(現在は滝沢市)の行政経営改革の成功は

 ①首長のリーダーシップ

 ②所管部署の粘り

 ③外部支援の受け入れにあります。

 特に自組織の特性に合わせて作成した3年の行政経営改革計画は、改革の成功を約束するものでした。


滝沢村行政経営改革成功物語

行政経営改革開始

幹部は早朝会議

村民の良評価

全員参画

ゼロ予算協働事業

業者の良評価

首長は現場を歩く

自治会長の念願

内閣府等視察多数